8月上旬のある日の朝、笛吹市御坂町竹居の花鳥山にある一本杉周辺で山梨リニア実験線の延伸区間を見下ろし、新型リニア車両「L0(エル・ゼロ)系」を待った。
直下には桃畑や瓦ぶき民家。その先に目線を移すと、甲府市周辺の住宅や工場など市街地が広がり、甲府盆地に夏の晴天時に特有の煙霧がかかる中で、南アルプス山脈がうっすらと青い稜線を示す。白色のコンクリートの実験線が、山脈に向かって真っ直ぐ伸びる。
薄緑色の作業服を着た男性が、約30メートル離れた場所の路上に集音器を置いた。周辺の工事をしていた作業員は「(リニアが)来るまで作業は中断だ」と言い、リニア車両が望める日陰に腰を下ろした。近くの野菜畑でくわを振るっていた男性も、手を休めた。
午前10時過ぎ、熱気を帯びた空気をわずかに振るわせる音が響き始めた。数秒後、トンネルから白と青の配色のリニア車両が盆地に姿を見せた。
笛吹市境川町の終点に向けて速度を落とすため、リニア車両が風を切る音は思ったほど大きくなく、普通電車並みの速さ。笛吹市八代町の八代ふるさと公園の直下にあるトンネルへと吸い込まれていった。数分後、折り返したリニア車両が再び現れ、上野原市方面へと速度を上げていった。
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