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連載<モノづくり消失>空洞化の現場(中)/主力工場再編/組立業見切りサービスへ/(写真付き)

XXXX.XX.XX  朝刊 10頁 産業 (全1028字)

 

 駿河湾を望む愛鷹山のふもとに位置する富士通沼津工場(静岡県沼津市)。同社に急成長をもたらした大型コンピューターのかつての主力工場は十月下旬、工場労働者を時代の要請に合わせて再訓練する巨大研修拠点に姿を変えた。

 ■リセット

 ビジネスマナーに始まり、プログラム言語を駆使してシステムを組む高度な実地訓練まで。ソフトウエア技術者への転身を目指す各地の約三百人が、来年二月まで約四カ月の泊まり込み研修を通じ「過去の清算」(秋草直之社長)に挑戦する。

 「会社も存亡の危機。何としても落ちこぼれないでほしい」(人事勤労部)。畑違いの分野への空前規模の配置転換に、研修担当者も緊張気味だ。

 ハードのモノづくりからソフトやサービス重視へ。自動車と並ぶニッポン製造業の代表、ハイテク産業が「リセット」(再出発)のボタンを押した。「世界の工場」中国との直接対決が待つ従来型の加工組立産業に見切りをつけ、需要の見込める情報技術(IT)サービス分野へシフトしようというわけだ。

 IT業界特有の変化スピードの速さは「雇用のミスマッチ」を企業内部で顕在化させた。「大型コンピューターの技術者は余っているのに、ネット関係は全然足りない」「五十歳以上の技術者で再教育できるのは一部。大部分は早期退職をお願いするしかない」。工場で培ってきた技術やノウハウと、会社が求める能力のズレを容赦なく指摘する声が聞こえてくる。

 ■人材供給源

 総務省によると、製造業の就業者数はこの十月、一年前に比べて八十三万人減ったが、サービス業では六十五万人も増加。ソフトサービス要員の人手不足は業界全体でなお三万人に上るとされる。

 ただ、先細りの製造現場が人材供給源として脚光を浴びる陰で、少なくない従業員が「家庭の事情で転勤がない工場勤務を選んだのに」とソフト技術者の道を捨て退職していく。「既に五十人辞めた。勤務地にこだわる人は多いが、配慮していたら前に進まない」。休日返上で面接を重ねた人事担当者は複雑な心境だ。

 「ある工場ではパソコンに全く手を触れたことがない人が半数もいた」(大手電機)。「一人百二十万円」とされる巨額の研修費を注ぎ込む一方でNECや日立製作所を含む業界大手は、保険を掛けるように「安価で優秀な」中国のソフト技術者に触手を伸ばす。リセットは成功するのか。従業員同様、会社も不安を押し隠している。

(写真説明)ソフトウエア技術者への転身を目指し、研修を受ける富士通の社員=静岡県沼津市

神戸新聞社

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