【風情満喫、2分の船旅 CM・映画登場きっかけ】
五百年の歴史を持ち、市民の足として親しまれている松山市三津の渡し船「三津の渡し」が、新たな観光スポットとして人気を呼んでいる。テレビのCMや映画に登場したことが、静かなブームのきっかけ。このところは県外観光客が「一度乗ってみたい」と立ち寄るケースも増えている。
「三津の渡し」は三津と港山の八十メートルの港湾を結ぶ渡し船。航路は市道に認定されており、いわば海につくられた道路。その由来は室町時代、伊予守河野道春が港山城主だったころ、食料の輸送に利用したのが始まりとされる。
船頭を二十八年間務めているXXXさん(XX)は、このところの利用者の変化を見逃さない。地元の人に交じって東北地方から訪れたという人がいれば、観光バスで乗り付ける団体客の姿も見かける。わずか二分の船旅だが、遠来の客は“懐かしさ”にも似た風情を満喫、満足そうに立ち去るという。
XXさんは、そのような客が乗船するたび「天気が良ければ、船上からは愛媛の観光を代表する松山城や石鎚山が見える。分けても春は海も穏やかで、周りの山桜が観賞できて一番です」とPRを欠かさない。
伝統の渡しも時代の変遷をたどってきた。もとは木造舟で、竹ざおで漕(こ)いでいた。大正初期には櫓(ろ)に、昭和四十九年には鋼船に装いを変えた。しかし、乗る人がいればその都度船を出すという、のんびり運航は昔ながら。無料というのも利用者にはありがたい。
※このサンプルは検索結果のイメージです。