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2007年の年間ベストセラートップを独占!
携帯小説について考える
2007年12月26日 (text by お)

携帯小説が売れている。『恋空 切ナイ恋物語』『赤い糸』『君空 ‘koizora’another story』『もしもキミが。』。これらはいずれも、2007年の年間ベストセラー(トーハン調べ)総合ランキングで20位までにランクインした携帯小説の書籍版である。部門別に見ると「文芸」部門ではトップ3を独占する勢いである。

携帯小説は、10代、20代の女性を中心に絶大な支持を集めている、らしい。
筆者(26歳/男)は、この機会に携帯小説を読んでみたが、正直なところ面白さが理解できなかった。携帯小説とは何なのか。G-Searchデータベースを使って考えてみた。

#G-Searchの新聞・雑誌記事横断検索で、キーワード「携帯小説 or ケイタイ小説 or ケータイ小説」で検索。本コラムでは「携帯小説」の表記に統一します。
携帯小説とは

さて、まずは携帯小説の基本情報を押さえておくことにしよう。

携帯小説は、携帯電話からの閲覧を想定して書かれた文章である。今では、携帯小説のポータルサイトが複数存在し、誰でも簡単に作品を読んだり、書いたりできる。

主な読者層は、10代、20代の女性といわれている。ジャンルは多岐にわたり、小説を始めとして、ノンフィクションや評論も存在する。読者層を反映してか、10代を主人公にした恋愛小説の人気が高い。冒頭で名前を挙げた『恋空』のように、書籍化、映画化された作品も存在する。

G-Searchに収録されている記事に、携帯小説の言葉が登場したのは2003年3月からだ。その年には、援助交際をテーマにした『Deep love アユの物語』という作品がヒットし、ベストセラーに名を連ねた。

携帯小説は、携帯電話の小さい画面でテンポよく話を進めるために、一文は短く、情景の描写は極力抑える、話に入りやすいよう会話中心の構成にする、などの工夫が凝らされている。

#以下は筆者が調べた結果の考察である。鵜呑みにはしないこと。
携帯小説と小説は全くの別物

携帯小説をいわゆる普通の小説(以下、小説)の感覚で読んでも、きっと理解できない。理解できないのは、携帯小説が、新しい感性を必要とする小説だからである。

それをリテラシーと表現する。

携帯小説を読み解くリテラシーは、携帯電話と共に育った世代が身につけた、新しいリテラシーである。

小説を読む感性を小説のリテラシーと呼ぶとすれば、小説のリテラシーの持ち主には、携帯小説のリテラシーは理解できない。読書家と呼ばれる、小説のリテラシーが強固な人ほど理解できない。

携帯小説を読む10代、20代の女性の多くは、おそらく読書には興味がない。小説のリテラシーがないとも言える。

これまで、そういう彼女たちの心に届く小説はなかった。しかし、携帯小説は届いた。時代の背景とか作者の工夫とか、いろいろ理由はある。が、細かい分析は省く。結果として、彼女たちは携帯小説を支持する読者になった。

彼女たちは、携帯小説を携帯小説のリテラシーで読んでいる。それは、彼女たちだけが持ちえる新しい感性なのだろう。

書籍化によって吹き出した否定的意見

冒頭に紹介した携帯小説は、いずれもベストセラーになっただけあって、書評が活発になされている。売り上げと評価はある程度比例しそうなものであるが、ふたを開けてみると、評価は押しなべて低い。5段階評価なら1や2ばかりである。

なぜか。筆者はこう考える。

もともと、携帯小説の読者と小説の読者は、そのリテラシーの違いから、明確に住み分かれていた。しかし、携帯小説の書籍化によって、携帯小説は小説の領域に進出した。

小説のリテラシーだけを持つ多くの読者が、本になった携帯小説という形で、携帯小説に出会ってしまった。読者は、携帯小説を小説と思って読んだ。そして支持される理由が理解できなかった。理解できないものが売れた。買ってしまった。読んでしまった。それが否定的な評価に繋がったのではないか。

携帯小説はダメ?

筆者には、携帯小説のリテラシーはない。彼女たちのように感動を共有するには、小説のリテラシーに毒されすぎてしまっている。

だから、携帯小説を読んで楽しむことはできないだろう。そういう意味では、ダメである。
ただ、筆者は携帯小説を全く新しいものとして理解した。共感はできないが理解した。

携帯小説は、本を読まなかった読者に、新しい可能性を示した。
携帯小説は、読者からの大きな反響を呼び起こした。
携帯小説にはコメントが付きやすい。携帯電話で見る故に、情報発信の敷居が低い。

携帯小説の先駆けとなった『Deep love』で、読者から寄せられたコメントが紹介されている記事があった。共感した、勇気をもらった、援助交際をやめようと思った・・・コメントが溢れている。これだけでも、携帯小説は見守るに値するのではないか。

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2003.07.07 東京夕刊 4頁 読書 (全806字)  ※本文50円
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