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体内時計が医学に役立つ
体内時計システムに関係する新しい遺伝子“時計じかけのオレンジ”を発見
2007年6月22日 (text by こ)

体内時計調整中

理研の研究チームは、ショウジョウバエの体内時計システムで重要な役割を演じている新しい遺伝子“時計じかけのオレンジ”を発見した。発見した新遺伝子が “Orangeドメイン”と呼ばれるタンパク質構造を有した“時計遺伝子”であることから、映画(原作は小説)にちなんで命名された。

この遺伝子と似た遺伝子はヒトにも存在していることが知られており、ヒトの体内時計システムを解明できる手掛かりになる。体内時計の仕組みが明らかになれば、体内時刻に合わせた薬剤投与を実現する最適化医療や、リズム障害の診断・治療が可能になると期待される(ニュースリリースより引用)。

体内時計の仕組みはいまだ謎めいているが、誰しも感覚としては持っている。体内時計に関する記事はどのようなものがあるか、G-Searchが提供する「新聞・雑誌記事横断検索」を用いて調べてみた。

体内時計の乱れは生活習慣の乱れ

人間の体内時計は約25時間で刻まれているという。
脳内の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」といわれる神経細胞が集まる場所で朝の光をキャッチし、日々そのずれを修正している。
そのため、朝の光を浴びないと体内時計が、どんどん後ろにずれてしまう。夜更かしして夜に光を浴びていると、体内時計の周期を長くさせる作用がある。体内時計の乱れは、体温やホルモン分泌のリズムにも影響を与える。

夜更かし朝寝坊の子供の方が、早寝早起きの子供よりも朝の尿中のホルモン濃度が低く、午前中に活動しにくいという調査結果も出ている。予定のない休日に昼まで寝てしまったら、リズムが崩れてしまったという経験は誰しもあるだろう。

アンチエイジングにも効果的か

老化の進行を抑えるためのアンチエイジング(抗加齢医療)では、年齢と共に低下したホルモンの補充などを行う。これらのホルモンの中で、比較的簡単に補うことができる「メラトニン」についても体内時計との密接な関係にある。

メラトニンは、体内時計を介して睡眠と覚醒の周期を整え、睡眠の質を高める役割がある。このメラトニンは、「朝十分に日の光を浴び、夜は早めに寝る」という、規則正しい生活を送ることで、分泌量を自然な形で増やすことができる。また、質の高い睡眠をとることで、老化の大敵である過剰なストレスを解消できるという。

セミの大量発生も体内時計の影響?

米中部で17年ごとに大発生する「17年ゼミ」の周期も体内時計が影響している。今年がちょうど大量発生の年にあたり、地球の全人口よりも多い70億匹も発生する予測が出ている。
17年ゼミは、米南部で13年ごとに大発生する「13年ゼミ」と、遺伝的にも近い。

興味深いのは、大発生の周期である17年と13年が共に「素数」(1とその数自身でしか割り切れない整数)になっていることだ。素数ではない12年、14年、15年、16年、18年でそれぞれ発生する他種のセミがいたとして、素数である13年、17年ゼミが多種のセミと最も出会いにくくなる。

他のセミとの遭遇が少ない→競合せずに数が増える→稀に他のセミと遭遇しても、同種が大量にいるため他種との交雑を免れる→正確な体内時計を維持する→・・・

数学と生物学が重なりあった奥深い話だ。

北京五輪も体内時計キープが鍵に?

北京五輪の体操と競泳の決勝の時間は、午前中に設定されることが決まった。米国のテレビ局の強い意向によるものだが、普段ならまだ体が寝ている時間帯にメダルがかかる一戦に挑まなければならない選手にとっては、由々しき問題である。

睡眠とスポーツの結び付きの科学的研究によると、競泳や体操にとってベストな競技時間は、午後6〜8時とされている。

もともと人間は体温が低い午前中より体温が上がる午後の方が運動を行うには適している。さらに午後6時からの2時間は、筋肉が最も柔軟かつ反射速度が速い。さらに、人間がスポーツをするのに一番適した時間は起床してから10時間後だとも言う。最も血流が良くなり、体の代謝が活発なのだ。
これに合わせると、午前中の決勝が9時開始だとした場合、前日の午後11時起床しなければならなくなる。午前中勝負に挑むためには、「夜は昼寝感覚で寝るしかない」と話す選手もいるぐらい体内時計のキープによるコンディションづくりに気を使っている。

「置き時計」と「砂時計」

重要な会議がある朝や、楽しみにしていた旅行に行く朝などに、目覚まし時計が鳴る前に自然に目が覚めたという経験をしたことがある人は多いだろう。これも体内に組み込まれた「体内時計」の働きによるものらしい。

体内時計の研究が進むにつれて、前述の視交叉上核に集まっている神経細胞の他にも、複数の体内時計があることが明らかになってきた。体内時計には、1日で1回転する、いわば「置き時計型」と、数十分程度の短時間の感覚を担う、いわば「砂時計型」の2種類があると考えられている。

砂時計型とは、これからの1分間を予測して、「今、1分経ちました」と知らせるタイマーのようなもの。楽しい時間があっという間に過ぎてしまったり、逆につまらない時間は永遠に続くように思えることは、砂時計型の体内時計がホルモンなどの影響を受けて、微妙な狂いが生じてしまうことが起因しているのではないかとされている。

体内時計と寿命の関係

さらに、この砂時計型の体内時計の働きは、寿命とも関連しているというデータもある。高齢者約300人を対象に、時計を見ないで1分間を数えてもらい、予測した1分が実際より15秒以上長かった人、15秒以上短かった人に分類し、調査後5年間の経過を追った。

その結果、予測した1分が実際の1分よりも15秒以上長かった人の方が、明らかに死亡する人が多く、心臓病や脳梗塞などの発症頻度も高いという傾向が見られた。予測した1分が、実際の1分よりも15秒以上長かった人は「早死にタイプ」、実際の1分よりも15秒以上短かった人は「長生きタイプ」となる。

予測した1分が実際の1分よりも15秒以上長かった人(実際は1分15秒以上経っている)は、15秒以上短かった人(実際は45秒未満しか経っていない)と比べて、結果的に時間に追われてしまうために短命になるのではと推測されている。

将来、もし体内時計の仕組みが完全に解明され、アンチエイジングも寿命もコントロールできるようになるとしたらと思うと、とても興味深い。

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2006.11.08 日刊スポーツ 東京日刊 (全2,604字)
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