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猫界の新ステータス?
野良猫、増やさず殺さず――「地域猫」への取り組み
2007年6月14日 (text by さ)

なんとか

近年、各都道府県に寄せられるネコに関する苦情は年間約数千件にものぼる。苦情の内容には、糞尿による悪臭、発情期の鳴き声、ゴミ袋が破られるなどに加え、野良ネコにエサをやって後始末をしない人なども含まれる。

2006年には、東京都の杉並区が、飼い猫の登録制および野良ネコへの無責任なエサやりに罰則を設ける条例を検討すると発表し、さまざまな意見が寄せられた。

飼い猫・野良猫に次ぐ“猫界の新ステータス”?

一方で、飼い主のいないネコを自然のひとつと見て共存していこうとする取り組みが全国的に展開されている。
「野良ネコをこれ以上増やさず、地域のネコとして一代限りの生を全うさせる」というコンセプトの元に、飼い主のいないネコに不妊手術を行い、ボランティアなどが食事やトイレの管理をするという取り組みだ。

実際、ネコは繁殖力の強い動物で、放置すると大変な勢いで増えていく。生後後7ヶ月程で発情期を迎え、平均3〜5匹の子猫を産む。翌年には親とその子供たちが、それぞれに3〜5匹の子猫を・・・とすると、まさにネズミ算式に増えてしまう。

不妊手術をすることにより、まず繁殖を抑え、また発情期のものすごい鳴き声がなくなる。
頭数の減少とトイレの管理により、糞尿の被害は緩和される。
食事を与えることにより、ゴミ漁りが減る。

こうして大雑把にポイントだけをまとめるとかなりの効果が期待できそうだが、実際の活動はどのようなものなのだろうか。

新聞・雑誌記事横断検索で、まずは「地域猫 OR 地域ネコ OR 地域ねこ」で検索をしてみると、ヒット件数は354件で、最も古い記事は、1997年12月に東京新聞に掲載された、横浜市磯子区の取り組みの記事だった。

ホームレスから「地域のネコ」へ格上げ

磯子区は1997年、保健所に勤務する獣医師の発案により、「ホームレス猫防止対策事業」を立ち上げた。

区民への詳細なアンケートに始まり、「区民と考える猫問題シンポジウム(通称ニャンポジウム)」を開催して猫擁護派・苦情を訴える派の両方の意見を元に、「区の問題として取り組む」ことを軸としたガイドラインを策定した。「地域猫」の誕生である。

このガイドラインに沿って、地域の主婦・獣医師などのボランティアが不妊手術やエサやりなどの実際の活動を行う。猫を一匹ずつ捕獲器で捕まえ、手術を施し、手術済みのしるしに緑の首輪を付けて放す。こうして猫たちに一代限りの命を全うさせ、自然減させながら共存を目指す。毎年生まれるネコの数を考えると気が遠くなるような活動だが、活動を続けるうちにトラブルの減少に成功したという。

事業内容には、自治会への理解・協力要請や猫相談員の育成とネットワーク化、手術費用のための「猫基金」創設なども含まれる。猫好きによるボランティア活動に終わらせず、動物が好きな人もそうでない人も「自分が住む地域をどうしたいか」ということから考えていく内容となっている。

磯子区の活動をモデルに、他の地域でも次々に活動が展開された。市民団体やボランティアが中心だが、さいたま市・神戸市・福岡市など、行政としての取り組みも徐々に増えてきている。早稲田大学のように、学生のサークル活動として構内での地域猫活動を行うケースもある。

一方、反発もある。2005年4月の秋田魁新報によれば、さいたま市で野良ネコの毒殺・撲殺など、虐待が相次いだ。猫の世話をすることに対し、反対の声の多い地域での事件だという。ネコを介した人間同士の確執による事件と言える。地域住民同士のコミュニケーションの基盤を作っていくとともに、警戒心の薄い地域猫を虐待から守る措置が必要とされる。

「安楽死」は安楽ではない

2006年6月、改正動物愛護管理法が施行され、動物の遺棄・虐待の罰金が最大30万円から50万円に引き上げられた。どのような事情であれ、ペットの犬・猫などを捨てると左記の刑罰が科せられる。

一方、都道府県に対し、犬・猫の引き取りを義務とするという条項も存在する。それにより、野良犬・野良ネコのみならず、不用意に生まれた子犬・子猫や、飼い続けることができなくなった犬・ネコを都道府県に引き取ってもらうことが実質可能となっている。

捨てることは違法でも、保健所に持ち込むことは違法ではないのだ。

保健所に収容された動物は、一定期間ののち、殺処分用の部屋へ追い立てられ、二酸化炭素を充満させた空間に約30分間放置される。その後、焼却炉で一括焼却される。

一般に思われているような殺処分専用のガスではなく、二酸化炭素による窒息死となる。「二酸化炭素は意識を朦朧とさせるので苦痛は少ない」という説明もあるが、飢えと不安の果てに窒息して死んでいくというのは少なくとも「安楽死」ではない。かといって、一頭一頭薬物注射での殺処分などは費用と手間、職員の負担の面から実現は不可能だ。いちばんいいのは、動物を保健所に持ち込まないことなのだ。

保健所にペットを持ち込む理由は「住宅の事情で飼えなくなった」「吠えてうるさい」「思ったより大きくなりすぎて世話が出来ない」「(犬・ネコが)重い病気になったから」「犬が年をとったので若い犬と交換したい」などなど、さまざまである。

昨日まで家族の一員として暮らしてきた動物が、どんな理由にせよ、信頼する家族の手によって保健所へ移送されて、見捨てられたとも理解できないままに死んでいかなければならない。新聞・雑誌横断検索で「犬 AND 猫 AND 処分 AND 二酸化炭素」で検索したところ、出てくる記事にげんなりしてしまった。

飼えなくなった場合は、最近はインターネットで広く里親を探すこともできる。専用のサイトも多々ある。どうしても死なせなければならないのなら、せめて、動物病院でもっと苦痛の少ない方法で終わらせることはできないか。

野良ネコを減らす活動をする人々がいる一方で、保健所に持ち込まれるネコの数は減らない。引越し時などに遺棄されるネコも多い。ペットブームと言われて久しく、一人暮らし世帯の増加から犬・ネコを飼う人は増えているというが、動物にも心があり、個性があるということと、飼い主はペットに信頼されているということを忘れてはならない。

※データベースの検索結果の件数は、2007年6月13日時点のものです

関連情報サイト
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