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DRMフリーって何?
音楽配信に新しい波「DRMフリーの音楽配信がはじまる」
2007年4月5日 (text by す)

デトックス?解毒っす?

4月2日、英国の大手レコード会社である EMI Group が DRM フリー(デジタル著作権管理技術を使わない)の楽曲販売を開始すると発表した。5月から、アップルの音楽/映像配信サービス iTunes Store を皮切りに販売を開始する。

DRM とは Digital Rights Management (System) の略で、デジタルデータの複製や利用方法を制御する技術体系のこと。デジタル楽曲データを複製すると、音質などのデータ品質が全く劣化しないコピーが出来上がってしまう。楽曲の著作権者や販売を行う企業を保護するため、音楽配信サービスでは最終ユーザのデータ利用方法を制御する技術が使われるのが一般的だ。具体的には、複製回数や使用できる端末/コンピュータ台数を制御したり、再生できる期間を指定するなどの方法がとられている。

違法ダウンロードと音楽業界の戦い

インターネットでファイル共有サービスが登場してからこれまで、音楽業界は違法な楽曲データのダウンロードに悩まされてきた。音楽 CD というメディアはDVD などと比較して複製やリッピングが容易であり、 iPod に代表されるデジタルミュージックプレーヤーの爆発的なヒットにより楽曲のデジタルデータを保有することが一般化した。レコード会社や関連団体は違法ダウンロードが音楽販売事業に損害を与えていると主張してきた。

CD からの楽曲データのリッピングを防止しようと、レコード会社は CCCD(コピーコントロール機能付き CD)の販売を開始する。G-Search 新聞・雑誌記事横断検索で調べたところ、2002年には国内でもエーベックス、ソニーミュージック、ユニバーサルミュージック、そして東芝EMI を含む大手レコード会社各社が CCCD の採用をはじめている。 CCCD は主にパソコンでのデータ読み取りを妨害する技術が使われており、音質の劣化やCD プレーヤーでの再生に不具合が報告されたりと問題があった。そしてなにより、「レコード会社の利益を守るために、合法的に音楽を楽しむ消費者にも犠牲を強いる」という観点から批判の的となり、携帯電話やパソコンでの合法的な音源配信サービスの普及とともに使われなくなってきている。

最近では音楽配信サービスでは世界的なシェアを持つアップルが、「iTunes Store で購入した楽曲データが iPod 以外のミュージックプレーヤーで再生できない」という批判に対し、Thoughts on Music という書簡で「レコード会社は DRM の撤廃するべき」という方向性を示唆し、話題となった。

DRMフリーの音楽販売

EMI Gruop は大手レコード会社では初めて DRM フリーの楽曲の販売を決定した。これまでの DRM 版の楽曲データと DRM フリーの楽曲データを並売する方針で、iTunes Store の場合、 DRM フリー版の楽曲データは高音質(256Kbps AAC)で価格が 1.29 ドルと高めに設定されている。販売対象となるのはデジタル販売用の楽曲・音楽映像のすべてと発表されており、 EMI Group の本気度が伺える。

EMI Group は今回の改革は音楽配信事業による売上を拡大するのが目的としている。EMI Group は今年の1月にも中国の検索エンジン大手「百度」と視聴型のストリーミングサービについて提携している。 EMI Group は CD 販売の低迷の影響を大きく受けている。違法ダウンロードを増長するデメリットよりも市場拡大のメリットが高く、他社に先駆けて改革に踏み出したと見ることができる。

国内販売への影響は?

今回の EMI Group の大胆な方針転換は音楽業界に波紋を広げている。各新聞社の記事をチェックする限り、「他レコード会社は様子見」と報道されている。気になる日本国内での展開について、読売新聞の記事によるとグループ会社である東芝EMIは「検討を始めた」ことを明らかにしている(東芝EMIは2007年度上期にEMI Group の完全子会社になる予定)。

2006年の音楽配信サービスの市場規模は前年比56%増の534億円で、CD シングルの精算額を上回ったことが話題になった。しかし内実は、携帯電話での販売が482億円と9割を占めており、デジタルミュージックプレーヤーで楽しむ音楽配信は米国に比べ規模は遥かに小さい。国内では音楽配信サービスの盛り上がりは今ひとつだ。販売されているカタログ数も音源配信サービス各社によりマチマチだし、昨年11月にはオリコンが音楽配信事業から撤退したほどだ。音楽配信サービスが音楽CD に変わる販売メディア/チャネルになるのは日本ではかなり先のようだ。

国内レコード会社はポジティブな市場拡大施策に転換できるのか

今回の EMI Group による DRM フリーという流れは、音楽配信の売上拡大を狙うものだ。楽曲データを従来より高い価格で販売するために、高音質と再生機器を選ばないという利便性を提供している。そして、これらの利便性により、さらなる利用を拡大するという循環を作りだしたいようだ。いわばポジティブな収益向上施策と言ってよい。

日本国内でも音楽配信売上を向上したいとレコード会社各社は考えていると思うが、その施策は「取りっぱぐれがないように」「CD に比べて顧客単価が減らないように」という色彩が強い。米国の1曲99セントという価格と比べても国内携帯電話でポピュラーな着うたフルの300円は高く、再生できるミュージックプレーヤーは限定されている。アルバム単位でしか購入できない楽曲の割合も多い。

購入した楽曲がすべてのプレーヤーで楽しめることが視野に入ってきたグローバルな音楽配信の波に国内のレコード会社がどのように対応していくのか。利便性を提供し、市場を拡大するというポジティブな施策に転換していくのか、今年は注目していきたい。

関連情報サイト
  • EMI Group  − 英国の大手レコード会社EMI
  • iTunes Store  − アップルの音楽/映像配信サービス
  • Thoughts on Music  − アップルが示したDRM撤廃に対する示唆
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