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寿司の代名詞に危機到来?
日本の食卓からマグロが消える!?
2006年11月30日 (text by 呉)

高速マグロ

日本人の好物と言えば「寿司」や「刺身」が挙げられる。中でもマグロには目が無いという人が多いのではないだろうか?
しかし、最近ではマグロの値段が高騰しており、このままでは日本の食卓からマグロが消えるのでは?とまで言われている。

年末に向けてマグロの需要が高まる中、これは日本の食卓にとっての一大事である。
一体これはどういう事なのか?その背景をG-Searchの「新聞・雑誌記事横断検索」で調べてみた。

乱獲問題

昨年のマグロの世界総漁獲量は200万トン強で、この内、約4分の1が日本で消費されている。マグロは一般にはえなわ漁で捕獲されるが、国内の遠洋漁業だけでは需要をまかないきれず、日本は世界各国から冷凍マグロを大量に輸入している。

しかし、圧倒的な日本の需要が世界中でマグロの乱獲を引き起こし、国際的な資源保護が叫ばれているのである。そんな中、日本はマグロの最大消費国として矢面に立たされているのだ。

高級魚の値上げ事情

食用マグロは大きく5種類に分類される。脂ののった「トロ」の部分が多く、すし屋や料亭などで使われる「クロマグロ」や「ミナミマグロ」に対し、「メバチ」、「キハダ」、「ビンナガ」の3種類は赤身が多く大衆的とされる。

このほど、マグロ資源を管理する「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」が、クロマグロの漁獲枠削減を決めた。地中海を含む東大西洋での漁獲量を、今の3万2千トンから2010年に2万5500トンへと段階的に減らすことになったのだ。

クロマグロは本マグロとも呼ばれ、特に日本人はクロマグロからとれる最高級のトロを好んで食べている。地中海沿岸では近年、若いクロマグロを捕っていけすで太らせる「蓄養」が盛んで、その多くが日本へ輸出されている。

先月、別の会議では、同じく寿司ネタや刺身になるミナミマグロの日本の漁獲割当量を半減することが決まった。今回の大幅削減は、日本が2005年に漁獲枠よりも過剰に漁獲していたことによる懲罰的な意味をも持っているから止むを得ない。

一般魚も高級魚に追随

漁獲がもっとも多く、一般的な赤身として日本人が食べるすしネタの大半を占めるメバチマグロなどについても、状況は同じだ。一般魚を中心に日本の年間マグロ消費量の20%以上を供給している台湾では、乱獲による国際社会から批判が集中した結果、大幅な減船に応じた。そのことでメバチマグロなどの日本へ入る量が減少し、マグロ全体の価格は値上がり傾向にある。

さらに、来月には中西部太平洋のメバチマグロなどの漁獲量について話し合いが行われ、全体の漁獲量が削減される公算が高くなっている。

また、世界的な原油価格高騰によりマグロ漁船の運行費上昇もマグロ価格の上昇に拍車をかけているのだ。

世界的な需要の拡大

さらに、世界の食生活の変化がマグロの高騰に影響しているという。欧米では「sushi」ブームや健康志向に加えて、牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザによる食肉不安から魚食ブームが起き、マグロなどの需要が増えている。

また、世界の魚の流通を変える勢いなのが、経済発展の著しい中国の存在である。中国ではもともと魚を生で食べる習慣はなかった。しかし、数年前から健康食として日本食ブームが起き、上海など沿岸部の富裕層を中心に刺身やすしを好んで食べるようになっているという。
さらに、最近では、内陸部の人まで大量に海魚を食べるようになり、消費量が爆発的に増え始めているというのだ。
これにより、中国は急速に魚の輸出国から消費国へ構造転換しようとしている。

このような世界的な魚食ブームでマグロ需要は確実に増え続けており、値上がりがマグロ全体に広がれば、将来はマグロが一般家庭の食卓から遠ざかる可能性もあるのだ。

生態系への懸念

しかし、マグロが食卓から遠ざかる以上に大きな問題が引き起こされている。

カナダのダルハウジー大学などの研究チームの解析結果によると、太平洋中部の広い海域で、過去50年間に、マグロやカジキ、サメなど食物連鎖の上位にある大型魚の数が大幅に減り、平均体重も半分以下になっているという。逆に、食物連鎖の下位にある小型魚の数が増え、海の生態系はこの間に激変した。漁業による乱獲が海の生態系に影響を与えているというのだ。

もしこのまま日本を始めとする世界各国、そして13億の人口を持つ中国がマグロ消費に突き進めばマグロは減るどころではなく、シーラカンスのように絶滅の危機に立たされることも有り得るという。マグロの乱獲は、確実に海の生態系を激変させる。そうなる前に、私たち人間は資源を限られたものとして、大事に使っていきたいものだ。

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