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キャッチボールで心が繋がる
キャッチボール復活の気配
2006年8月4日 (text by や)

空き地で草野球

公園や空き地でのキャッチボールを最近見かけなくなった。昔なら父親と子供がキャッチボールをする姿をそこらかしこで見かけたし、キャッチボールで絆を深めるイメージもあったように思う。

このキャッチボールを復活させようと、プロ野球選手会が動き出した。低迷する野球人気復活のため野球人口の裾野を広げる目的もあるようで、メーカーと共同でキャッチボール専用ボールを作るなど力が入っている。
新しい動きを見せるキャッチボールについて、G-Searchの新聞記事データベースを使い調べた。

キャッチボール専用ボール「ゆうボール」

プロ野球選手会は、神戸のボールメーカー「内外ゴム」と共同でキャッチボール専用ボール「ゆうボール」を開発した。これは素手で扱えるほど柔らかく、本格的な握りが可能な縫い目も入っているこだわりのボールで、千葉ロッテの渡辺俊介選手が「これなら買いたい」とコメントするなどプロ選手にも評判が良い。

選手会は今年7月に、このボールをつかったキャッチボールイベントを開催した。イベントには元野球選手の水上さん(元ロッテ)や寺村さん(元ヤクルト)が参加した他、選手会会長のヤクルトスワローズ宮本選手が駆けつけ、約360人の参加者があったという。

ところでキャッチボールを普及させる為に、何故、ゆうボールの開発が必要だったのだろうか?そこからキャッチボールが置かれた現状が見えてきた。

キャッチボールの危機

日本公園緑地協会の調査によると、政令指定都市と東京23区のうち、なんと「52%」の公園でキャッチボールが全面禁止されているという。

自治体では一般利用者への安全性を理由に禁止しているようで、これがキャッチボールを見かけなくなった理由であり、安全性を追求した「ゆうボール」が開発された理由のようだ。

一方、同じ日本公園緑地協会の調査によると、日本全国の野球場の数はここ20年で倍増しているという。

ところが、野球場の利用を管理団体の多くが「組織化された団体」に限ってしまって為、親子や子供たちなどキャッチボールを楽しみたい人々は、行き場を失ってしまったのだ。

球界は、野球人気の復活にプロ野球などトップレベルでの強化に力を入れていたが、野球で「遊ぶ」底辺の拡大については、目が向いていなかったといえるだろう。

ようやく昨年より「キャッチボールができる公園づくり事業」が発足し、公園に防護用ネットを張るなど、キャッチボールが認められる環境作りに取り組んでいる状況で、日本野球機構も3年間で6000万円をこれに助成するが、全国の市町村に行き渡るには長い年月がかかる見込みだ。

キャッチボールの効用

ボールを投げあう。それだけの単純なキャッチボールだが、やってみると楽しい。
それは何故だろう?新聞・雑誌記事データベースから見つけた記事にヒントがあった。

例えば元ロッテの水上善雄さんは、「単純なキャッチボールで無意識のうちに思いやりの心が出てきて、信頼関係も生まれる。心と言葉のキャッチボールでもあるんです」と、キャッチボールの魅力を語る。

また、野球小説で知られる赤瀬川隼さんは、作家の佐山和夫さんの話として「キャッチボールは、相手の投げてきたボールを一旦手で受けとめるという動作が入る。それから今度は、相手の捕りやすいところをめがけて投げ返す。この、受けとめ合う動作を繰り返すうちに気持ちが通ってくるのだ」と、新聞で連載する随筆で紹介している。

思い返すと、確かにボールを投げる際はできるだけ捕り易いように気遣っていた。暴投した場合は大声で謝る。また、ボールをキャッチしたとき「ナイスボール」など、自然と言葉にしていたものだ。

こうしたキャッチボールの側面は、映画のシーンでも効果的に使われている。
特に記憶に残るのは「フィールド・オブ・ドリームズ」のラストで、亡き父親の幻と再会した主人公がキャッチボールをするシーンだ。ここでは解りあえないまま亡くなった父親と、一球一球確かめるようなキャッチボールによって、気持ちを伝え合う。

また日本映画では、黒澤明監督がキャッチボールによるコミュニケーションを意識していたようである。新聞記事では、黒澤明監督が撮影にミットとボールを持ち込み、役者の息が合わなくなったのを見てキャッチボールをさせた、というエピソードを紹介している。

世界の巨匠までにも認められたキャッチボールなのだ。というのはこじ付けだが、キャッチボールが見られない風景はどこか寂しい。是非ともキャッチボールが身近に感じられる環境を作ってもらいたい。

関連情報サイト
関連記事情報(for G-Searchデータベース)
2006.07.27 地方版/東京 26頁 写図有 (全1,320字)
2006.07.22 日刊スポーツ 東京日刊 (全294字)
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