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原油価格の上昇が止まらない
自然の力・離岸流とは?命を守る海水浴の作法
2006年7月27日 (text by さ)

リップカレント

 梅雨明けも待ち遠しく、7月中旬以降、各地の海水浴場が次々と海開きをした。
 筆者の故郷、茨城県北部の海岸でも、水温は低いがそろそろ夏を迎える準備が出来ているはずだ。
 中学生くらいまでは、よく友達と「今日、海行く?」「おー、行くべ」を合図に、自転車のカゴにスイカを積んで遊びに行ったものだ。そんなときに、大人から毎回しつこいくらいに言われたことがある。曰く、「沖には行くな」「潮が満ちてくる前(夏だと大体午後2時〜3時)に帰ってこい」「誰かが溺れていたら、絶対自分で助けようとせず、大人を呼べ」。

 また、盆(8月中旬)以降は「死人に引っ張られるから(死んだ人はお盆に海方面から帰ってくる)」と言って泳ぎに行かせてもらえなかった。これは、お盆の時期を境に波が高くなることや、クラゲが出てくるなど、海水浴に適さなくなるためだと思われる。北関東の夏は短い。
 他にも、消波ブロックの隙間に落ちて溺れかけた男の子の話や、傷口から貝の卵が入り体内で繁殖した話(これは根拠のない都市伝説)など、海にまつわる色々な話を糧に、地元の海との付き合い方をなんとなく身につけてきた。

 前振りが長くなったが、今回は、ビーチで安全に遊ぶにはどうしたらいいか、そのポイントを確認していきたいと思う。

 これから楽しい行楽シーズンというのに、耳障りのよくない話題で申し訳ない。だが、これまで事故に遭った人も「まさか自分が」と思っていた、というより、「海水浴で事故が起こる」とは考えていなかったのではないだろうか。

 備えあれば憂いなし。海でも陸でも何が起こるか分からない。海水浴に行く前に、ほんのちょっと気をつけたいことを、一“海好き”の視点から書いてみたいと思う。

事故が起こるとき

 今年2月の海上保安庁発表の資料(「マリンレジャーに伴う海浜事故による事故者数及び死亡・行方不明者数の推移」)によると、昨年の事故者数は793件、うち死亡・行方不明者数は284件。ピークだった平成14年の事故者963件・死亡・行方不明者333件から、年々減ってきている。

 内容を見ると、遊泳中の事故はそのうち約4割を占め、次いで釣り(約27%)・サーフィン(約11%)、などが並んでいる。

 遊泳中の事故の形態を見ると、漂流(20%)、波に引き込まれる(19%)、深みにはまる(14%)、パニック(8%)、孤立(5%)、衝突(3%)などがある。気がつくと沖へ流されていたというパターンや、思わぬ高波に呑まれてしまうことが多いようだ。
 気になる事故原因は、知識・技能不足が2割を占め、次いで、気象・海象不注意(18%)、無謀な行為(18%)、実施中の活動に対する不注意(11%)、周辺環境に対する不注意(10%)、気象・海象無視(6%)などの「不注意系」が並んでいる。
ここから、事故に遭わないためのヒントが得られないだろうか。

 知識・技能不足というのは、水泳の能力などを指すのだろうか。沖に流され、戻ろうと波に逆らって泳いでいるうちに力尽きてしまう、というケースが思い浮かぶ。また、浅いと思っていた場所で急に深みにはまり、パニックになって溺れてしまうケースも考えられる。
 また、台風や強風で波が高いのに海に入ったり、ブイを超えて沖へ泳いでいったり、遊泳禁止区域で泳いだりといった、海水浴場でよく見かける行為を思い起こさせる。判断力が低下する飲酒後の遊泳も当然してはいけない。「気象・海象無視」とあるが、注意報・警報を無視して海に入るのは論外だ。
 海の状態と自分の体調をよく見て、安全な場所で楽しむというのが基本で、その枠を超えたときに事故が起こるのだろう。

自然の力・離岸流とは

 泳いでいるうちに、いつの間にか沖に流されてしまう。泳いでも泳いでも岸にたどり着かない。そんな悪夢のような状態にもし陥ったら、どうすればよいのだろうか。
 プールと違い、海岸によって地形が異なり、地形が違えば潮の流れも異なる。岸に押し寄せた反動で、離岸流(りがんりゅう)またはリップカレントと呼ばれる、沖に向かって流れる潮流が発生することがある。秒速1〜2mと言われてもピンとこないが、オリンピック選手でも遡るのは難しいほどの強さだという。
 国土交通省国土技術政策総合研究所のサイトに、離岸流につかまったときの対処法が書かれている。

みなさんが、もし離岸流に巻き込まれた時には、慌てずにできるだけ陸地と平行に泳いで、離岸流から脱出しましょう(図-3参照)。離岸流の幅は、20〜30mくらいなので、25mプール分くらい岸(陸)と平行に泳げば脱出できるでしょう。

 なるほど。
 ……。
 しかし実際、不安と緊張の中、波立つ慣れない海で、25メートルプラス岸までの距離を果たして泳げるだろうか?恐らく足がつかないところまで流されているため、途中で休むこともできない。慌てて海水を飲んだりすると、パニックになる場合がある(海の水はものすごくしょっぱい。そして不味い)。
 落ち着いて対処できる精神力と、常に上下する海面を泳ぎきれる技能と体力のある人なら、この方法で助かるだろう。そうでない人は、体力切れになる前に、ライフセーバーのいる岸に向かって手を大きく振るなど、早めに助けを求めよう。

人気のないビーチの魅力

 混雑した浜を避け、静かな入り江を見つけてテントを張り、ゆっくりとすごしたいという気持ちは誰にでもあるだろう。
 そういう場所は、たいてい、複雑な海流などのために遊泳禁止区域となっている。つまり、監視員がいないということだ。
 人目を気にせずにいられていいじゃない、と思うかもしれないが、つまり、先述のような状態になっても助けてもらえない、あるいは助けを呼ぶのに時間がかかるということだ。
 いくら魅力的でも、そういう場所では砂浜を散策するにとどめ、海へは入らないようにしたい。また、水流が複雑な河口付近にも近づかないようにしよう。大人としての自制心が、自分や家族の安全につながる。もちろん、よその子供が遊んでいたら、注意するか、その子の親に声をかけよう。

哺乳類としての海への礼儀作法

 これまで書いてきたことは当たり前のことばかりだ。頭では分かっていても、海ではちょっとした気の緩みや疲れから、残念な結果につながりかねない。
 この辺で海水浴の作法をまとめてみよう。

・情報を集めておこう

 せっかく遠くから来て楽しみにしていたのに、と思っても、台風・高波の場合だってある。海岸から見たときに波が高いようであれば、潔くあきらめよう。迷ったときは、監視員に尋ねてみよう。
 子供がぐずったときのために、近くにプールや温泉、レジャー施設がある場所を選ぶといいかもしれない。

・泳ぐ前にまずチェックすること

 必ず、絶対に、監視員がいる浜で泳ごう。監視員の目の届く範囲とそうでない範囲(岩や消波ブロックの陰など)もチェックして、同伴者にも伝えておこう。
 また、全体を見回して、潮流が異なる場所(海の色や白波の立ち方が違う)も確認しておこう。初めに監視員に尋ねておくのがベストだ。
 波打ち際を見ると、引き潮か満ち潮かが分かる(事前に調べることももちろん可能)。荷物を置く場所の参考にもなるだろう。

・水に入ったときに注意すること

 離岸流ほどでなくても、波に押され、気がつくと沖に近づいている場合がある。ブイの外に出ないのは鉄則だが、岩や消波ブロックなど、横のラインの目印を意識し、沖に寄っていないかをときどき確認しよう。

 前述のように、浅いと思っていても、急にふかくなっている場所がある。また水位は常に0.5〜1.5メートル程度は上下するので、浅いと思ってても急に足が付かなくなることがある。
 小さな子供の場合は、大人よりも背が低く、波に逆らって泳ぐ力もない。プールと違い、水の下に潜ってしまうと、水面が光を反射して見つけられないことが多い。一旦見失うと広さが災いする。
 子供連れの場合は、目を離さないでいてほしい。

・万一を考えて…

 万一、自分が流されてしまったら、あるいは、家族や友達が沖に流されているのを発見したら、どうするか。
 そのときは、自分で助けに出るよりも、すぐに監視員や周りの人に助けを求めるのがベターだ。
 また、水着や浮き具、ラッシュガードを選ぶときには、出来るだけ目立つ色を選んでおけば見つけてもらいやすい。派手な色のTシャツでもいい。他にも、着衣に空気を含ませて浮く方法や、呼子(笛)を身に付けておくなど、役立つ情報・知識はインターネット上に溢れている。どんどん探して積極的に自衛しよう。

 マスメディアの強調する、青く輝く海と白い砂浜のイメージは決して悪いものではない。しかし、水難事故のニュースを見るたびに、海自体はもともと哺乳類(一部を除く)のレジャーのために存在するのではないと改めて思う。海に対しては、「ちょっと波打ち際をお借りします」くらいの気持ちでいた方がちょうどいいのかもしれない。砂浜を汚していくなど言語道断だ。

 ちなみに、新聞・雑誌横断検索で「離岸流 or リップカレント or リップ・カレント」で検索したところ、各地方紙中10件以上ヒットしたのが北海道新聞、中日新聞、静岡新聞、北國・富山新聞、中国新聞で、他の地方紙も数件ヒットしたなか、下野新聞(栃木県)・上毛新聞(群馬県)、そして意外にも山形新聞(山形県)の3紙で、ノーヒットだった(2006年7月24日時点)。収録対象期間の違いや通信社の記事は除かれているため一概には言えないが、普段海に接する機会の少ない地域でこそ、海水浴の安全の情報が提供されてほしいと思う。

 それでは、いろいろ書きましたが、今年も安全に楽しく海水浴をお楽しみください。あ、ゴミはもちろん持ち帰ってね。

関連情報サイト
関連記事情報(for G-Searchデータベース)
2002.08.10 地方版/千葉 23頁 写図有 (全606字)
2006.03.19 地方版/山口 23頁 写図有 (全1,511字)
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