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日本と何がちがう?
世界一セクシーな国の少子化対策とは?増子化に転向した世界の国々の必勝法
2006年4月14日 (text by さ)

少子化

学校の近くなど、子供の多い地域に住んでいるとあまり実感できないが、日本の出生率は確実に減り続けているという。

そしてその背景には、散々論議されていることだが、子どもを産みにくい方向へ社会が変化したことが挙げられる。
新聞・雑誌記事情報で「少子化 AND 原因」で過去1年分の記事をざっくり集めて見出しを読んでみると、主に(1)晩婚化=晩産化の影響、(2)出産・養育の費用の問題、(3)出産後の職場復帰が困難など働きながら子どもを育てにくい、などがその背景にあることが読み取れる。
更に読み勧めていくと、晩婚化の要因にもさまざまな社会の変化があることが分かり、興味深い。

国や自治体を中心にいろいろな少子化対策が進められているが、一長一短・一進一退で、まだまだ練る必要がありそうだ。

当コーナーでも昨年12月にこの問題を取り上げたが(「2005年、日本人の人口が最大となった年でした」〜 少子化問題を考える )、他の国々の状況はどうなっているのだろうか。今回は、一足先に増子化に転じた国の対策について、新聞・雑誌記事横断検索で調べてみた。

スウェーデン〜独自の「親保険」「サムボ法」「シングルマザー手当て」で増子化に〜

世界全体の人口は、1950年の25.2億人から増加の一途をたどり、2000年には60億人を突破した。2050年には89億人に達すると言われている。しかし、地域別の出生率の増減には大きな格差があり、先進国の中でもヨーロッパの出生率は1.38と特に低い。

その中で、少子化を克服しつつある国として真っ先に取り上げられるのが、北欧のスウェーデンだ。
1990年代前半から出生率は下がり続け、2000年には1.54にまで低下したが、育児支援政策などが功を奏し、2005年には欧州平均を上回る1.7にまで持ち直した。

子どもを持ち育てることへのハードルを取り除く施策が、社会状況にマッチして功を奏している。以下、いくつかの例を紹介する。

「親保険」とは、父親と母親合わせて480日間の育児休暇を取ることができる制度で、そのうちの390日間は、休暇前の給与の8割が保障される(日本は4割)。分割取得も可能で、うち60日間は父親のみに割り当てられる(パパクオータ)。初めは低かった男性の取得率は、国の推奨により年々上がってきている。また、子どもが八歳になるまで勤務時間を4分の3に短縮する権利も認められている。親保険は、事業主からの社会保険料と税が財源となっている。

「サムボ法」とは、サムボと呼ばれる事実婚(非法律婚)カップルに対しても、財産分与や養育権などの法的な権利・保障を認めた法律(1987年制定)だ。同棲カップルを法的に保護することにより、ライフスタイルの選択の幅が広がり、より柔軟な選択が可能となる。法律婚カップルの9割がサムボを経験しており、法律婚への移行過程として社会に定着している。妊娠や第一子誕生を機に結婚するケースが多く、婚外出生率は56%と抜きん出て高い(アイスランド63.6、フランス44.3、日本は1.93)。そのため、晩婚化が晩産化に直結していないという特徴がある。

更に、手厚い家族手当などの保障や、シングルマザー世帯への支援が、高い出生率を支える要因となっている。
しかし、これらの施策が増子化につながったとみられることに対し、生活へのゆとりや女性が働きやすい社会を目指した結果であるというコメントもある。
子どもを産みやすい社会とは、まず親となる働き盛りの世代にとって居心地よい社会であるのかもしれない。

フランス〜必見!「世界一セクシーな国」の増子化対策

フランスの出生率は、1960年代の2.73から緩やかに下降しつづけ、1994年にはとうとう1.70を割り込んだが、しかしその後は徹底した出産・育児支援政策によって、2005年の統計では1.94と、増子化に転じている。

フランスでは、妊娠から出産に関わる医療費がすべて社会保険の対象となる以外にも、子どもが3人以上の家庭を「多産家族」として優遇する制度がある。家族手当が3人目から大幅に増えるばかりでなく、国有鉄道の割引が家族全員に適用され、子ども3人で3割、4人で4割、・・・6人以上で6割引きになる。
フランスほど頻繁に家族での長期旅行をしない日本でも、盆正月の帰省時にこんな制度があったら・・・と思う人は少なくないのでは。
また、婚外子に対しても各種家族手当が支給されるのは、スウェーデン同様だ。

更に、日本と大きく違う点は、出産関連の医療費対象に「産後ケア」が含まれることだ。

出産時に胎児を通過させる際、骨盤内の臓器を支える筋肉が損傷を受け、程度の差はあるが、出産後に尿漏れや性器脱などの症状を引き起こすケースがある。「産んで終わり」ではないのだ。
日本ではあまり一般に浸透していないが、フランスでは1985年に骨盤底リハビリが導入され、膣分娩をする女性の大半がこのリハビリを受けているという。費用の全額を公費でまかなうことができ、産後ケアの常識となっている。フランス以外でも他のラテン系の国々や、アジアでは韓国でも熱心に取り入れられている。

産後ケアを行うかどうかで、その後の女性のクオリティオブライフや、ひいては夫婦の関係や子どもの数にも影響するという。詳しくは「新聞・雑誌記事横断検索」で、キーワード「骨盤底リハビリ」などで検索してみてほしい。

※検索にはID・パスワードが必要です。表示には料金がかかります

仕事をする女性の割合が日本に比べ高いフランスでは、働く女性の支援についても柔軟な政策をもって対応している。
育児休暇手当として、一子当たり毎月約6万9000円が3年間支給されているが、3年間もの育児休暇は実情に合わないという声があり、支給期間を1年間にして金額を約10万円にするという別の選択肢も設けることとした。新制度は2006年6月施行だ。

その他の国々

お隣の中国では、日本と同様、高齢化対策に追われながら急激な少子化の不安に直面している。人口抑制のための「一人っ子政策」が功を奏した結果だが、社会保障その他の面で懸念する声が上がっている。

日本より深刻な少子化に悩むシンガポールでは、一時期80年代に出生率が1.62まで下がった。以後20年以上国が手がけるお見合い事業の成果が見られ、下がり続けていた出生率は下げ止まりの傾向にあるという。
実際の企画・運営は民間に委託し、「スピードデート」「図書館デート」などさまざ まなイベントを年間2000件以上を実施する。かなり本気だ。
そのほか、2001年に、2人目からは6歳まで補助金を支給する制度を導入した。他の国と同様、あとは数が増えるほど支給額も上がっていく仕組みだ。

ロシアでは、出生率以前に、死亡率増加による深刻な人口減の対策として、法律を緩和して外国人労働者を受け入れる政策を模索している。主にタジキスタンやウズベキスタンなど、旧ソ連国の出身者が多いという。

南米ウルグアイでも少子化が進み、日本同様に社会保険制度に影響を及ぼしている。現在の出生率は2.19だが、もうすぐ人口維持可能な数値を割り込むと見られているにも関わらず、貧困対策から産児制限をせざるを得ないという深刻なジレンマを抱えている。

さて、日本は・・・・・・

1970年代に第二次ベビーブームを迎え、出生率2.13を記録した後、じわじわと下がり続けているのはご承知の通りだ。
いささか泥縄式な感じが否めないが、家族手当、育児休暇などの制度に関心が集まり議論されているのをよく耳にする。

増子化に転じた国の対策を見ると、人がのびのびと働きやすいようにする中で、政府が手助けしていこうという感じがする。家庭のスタイルにこだわらず、家庭の形態などによる受給制限がほとんどないのも印象的だ。

日本でも近年、離婚率は増加の傾向にある。家庭の形態や価値はかつてないほど多様化しており、家庭のイメージは一つの枠には収まらなくなっている。日本においても、どのような形態の家庭であれ不安なくのびのびと子育てができるアイコンを、政府がぜひ示して欲しい。

と思っていたら、毎日新聞記事情報 でこんな記事を見つけた。

教科書検定:「多様な家族」に逆風 概念めぐり、意見相次ぐ−−高1用家庭科
2006.03.30 東京朝刊 31頁 社会 (全1,708字)

2005年度の高校一年用の家庭科の教科書検定において、父子・母子家庭に言及した内容や、ペットを家族とみなす記述に対し、一部の国会議員から、「家庭崩壊につながる」という非難の声が上がり、別の内容に差し替えになったという。「おとうさん」「おかあさん」「こども」のパーツが揃っていないと家庭ではないと国に示唆されているように感じる。

多様化する社会に国の打ち出す対策はついていけるのか、それともついていかないのか。ついていかないとしたら、どのように対応するのか。これからの動向を、一国民として見守りたいと思う。

最後に、妊娠・出産・育児の鍵である母親となる女性の立場から、2006年1月6日に読売新聞に掲載された記事より、俵万智氏の言葉を引用させていただく。

「子育てに一番必要なのは人手だと思う。1日のうち10分でも見てくれる人がいるかいないか、その手がいくつ近くにあるか。今は、いくら便利な電化製品に囲まれていても、人の手が少なくなったから、子育てを困難に感じる人が多い気がする」(2006年1月6日 読売新聞掲載 「[超・少子化を語る]歌人・俵万智さん 母親の負担感増加(連載)」より)

前出のスウェーデンの男性の育児休暇の意味が、切実さを持って迫ってくる。

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