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煮ても焼いても食えない?
大型クラゲ大量発生の背景に見えてくるもの
2005年11月25日 (text by さ)

オニヒトデ

日本海側で大量発生している大型のクラゲ「エチゼンクラゲ」のニュースが、ここ数年テレビや新聞などで頻繁に取り上げられている。

網の破損、漁獲量の減少など、日本海沿岸を中心に、日本の漁業に甚大な被害を与え続けており、しかも具体的な根本原因の解決の目処は立っていないという。

ある年に突然起きたかに見えるこの大量発生だが、いったいいつどのように始まったのだろうか。
新聞・雑誌記事横断検索で、一般紙・地方紙を対象に、「エチゼンクラゲ」をキーワードに、年度ごとのヒット件数を調べてみた。暇な人間だと思わず、少々お付き合いいただきたい。

年  件数
1988  1
1989  1
1990  0
1991  0
1992  0
1993  0
1994  0
1995  8
1996  3
1997  2
1998  2
1999  1
2000  8
2001  2
2002  46
2003  112
2004  114
2005  340

※新聞によって収録開始年が違うため、実際に紙面に掲載された件数とは異なる場合もあります。収録範囲については、「新聞・雑誌記事横断検索」の検索画面中の「各媒体の収録期間」をご覧下さい。

1988-89年に1件ずつヒットしているが、学術・料理など、いずれも大量発生とは無関係の記事だった。
G-Searchデータベースにおいて、初めてエチゼンクラゲ大量発生の記事が現れたのは、1995年9月下旬。一般紙と北國・富山新聞において、山陰から北陸にかけて巨大クラゲが異常繁殖し日本海を北上しているとの記事が見られる。この時点での記事数は8件。「猛暑の影響で37年ぶりの大繁殖」とあり、定置網への被害なども出ていたようだ。

その後の記事は、水族館での展示やクラゲの料理法などが中心となり、被害は一旦落ち着いたかに見えるが、2000年には再び石川県沖での大量発生が報じられている。このときの原因は、東シナ海に停滞した台風により大陸沿岸のクラゲが流されてきたためと見られている。

そして2002年9月18日の北國・富山新聞の一報を皮切りに、全国紙・各地方紙での報道が相次いでいる。福井県沖では、定置網にかかったミンククジラがクラゲの毒で瀕死状態で捕獲されたとの記事もある。その後クラゲは潮流に乗って北上し、青森県の津軽海峡を渡って寒流に乗り今度は南下した。12月下旬には、千葉県の勝浦で捕獲されたとの記事も見つかった。

シーズンを過ぎて一旦落ち着いたかに見えたクラゲの大量発生は、その翌年も、また翌々年も続き、日本海のみならず太平洋側にまで深刻な被害をもたらし、今日に至っている。

各漁協の被害額は数億〜40億円にも上り、減収を覚悟で定置網の設置数を減らさざるを得ない漁業者の困難な状況を報じる記事も目立つ。

大型のエチゼンクラゲがこれほどまでの被害をもたらす以前から、実はミズクラゲ・アカクラゲなどが、全国各地で大量発生していた。

1991年には、大阪湾で大量発生したクラゲが火力発電所の海水取水口に詰まり、対応に追われたという記事がある。その後、1993年には名古屋の火力発電所、小樽の海水浴場にも現れた。1999年には、福井県の高浜原発・新潟県の柏崎刈羽原発に大量のクラゲが押し寄せ、冷却水の確保ができなくなったため、一時的に出力を低下させる処置をとっている。同年9月には、福井県の新型転換炉「ふげん」の取水口にクラゲが詰まり、原子炉を緊急停止させるというアクシデントも起きている。

2000年には日本海沿岸で毒性の強いアカクラゲが、2001年には三重県の引本湾・熊本県の有明湾でミズクラゲが大量発生し、地元漁業に深刻な被害を与えた。
また、福島県では今年、淡水に生息するマミズクラゲが大量発生している。原因は不明だ。
国外でも、2002年、オーストラリアのグレートバリアリーフで毒クラゲが大発生し、観光客1名が死亡している。2005年には、スペイン南部のリゾート地でもクラゲが異常発生した。気温の上昇のためといわれているが、原因はまだ解明されていない。

水温の上昇や工業排水による海水の富栄養化、クラゲの天敵となる魚の乱獲、中国・長江の洪水の影響による海中の塩分濃度の低下など、さまざまな原因が指摘されているが、はたして対策はあるのだろうか。

「エチゼンクラゲ AND 対策」で検索すると、短期間でもかなりの数の記事がヒットする。それによると、魚とエチゼンクラゲを分離する定置網の開発が各地で着々と進んでおり、秋田県の水産振興センターでは7割を排出できるようになったという。神奈川県の江ノ島水族館では繁殖に成功し、大量発生の仕組み解明が期待される。
多くの人々の努力で、一歩ずつではあるが、漁業の問題は解決へと向かっている。

エチゼンクラゲだけでなく、珊瑚礁を食べつくすオニヒトデの大量発生、コイヘルペス・鳥インフルエンザの流行や台風の大型化など、近年とみに身近に自然界の異変を感じるニュースが多くなった。

豊かさを求めて伸ばした腕が反転し、じわじわと自分の首を絞めはじめている。しかし一旦絞まった手はなかなか緩めることができない。窒息する前に、手の力を少しずつ抜いていく努力をしなければならない。そのためには何ができるだろうか。
「地球に優しい」という思想は20世紀の遺物に過ぎない。地球よりも自然よりも、まず人間を守らなければならないところまで、私たちは自分自身を追い詰めている。

関連情報サイト
関連記事情報(for G-Searchデータベース)
2005.11.28 地方版/広島 29頁 写図有 (全267字)
2005.10.26 地方版/福井 23頁 (全357字)
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