
今週、「所得税と個人住民税の定率減税を2007年度で全廃する見解で一致」というニュースが流れたが、その陰でひっそりと役目を終えようとしている制度がある。テレビや雑誌でおなじみの長者番付がなくなるかもしれないのだ。
この長者番付(高額納税者公示制度)とはどういうものなのか。G-Search の新聞・雑誌記事横断検索を検索してみた。
そもそも長者番付って?
高額納税者公示制度は所得税法233条施行規則106条に定められた公示制度で、税務署が3月31日までに提出された納税申告書の内、所得税額1,000万円を越える人の氏名、住所、納税額を5月16日から5月31日まで公示する。1950年(昭和25年)に導入された制度で、高額納税者の納税状況を第三者が監視する、高額納税者の国への貢献を讃える、という目的がある。
高まる長者番付廃止論
ではなぜ廃止論が議論されているのか。主な問題点としては、公示された納税者のプライバシーが侵害される点があげられる。公示された人達のもとにはダイレクトメールやセールスマンの訪問が相次ぐ。悪意のある人に悪用されたり犯罪につながる危険性も指摘されている。公示はエリアごとに行われており、その名簿は書籍としても売買されている。政府税制調査会が「(公示制度は)犯罪や嫌がらせの誘発の要因となり、個人のプライバシーへの配慮の観点から問題が多いと考える。今後、制度の廃止を含めて検討する必要がある」と指摘してから数年がたった。
公示制度は所得税のほかにも、法人税、相続税についても定められている。今年より個人情報保護法が施行され個人情報の取り扱いの意識が高まる中で、この公示制度が継続されているのは、公示制度を廃止するには、これら税法を修正する必要があるからだ。
税制は政府税制調査会が中心となって改正を議論している。サラリーマン増税、定率減税の全廃、控除縮小という強烈な内容で話題になった今年6月の「個人所得課税の見直しに関する報告書(論点整理)」においても「高額納税者の公示制度は廃止を検討すべき」と検討課題にあげている。
長者番付トピックス
昭和25年に長者番付がはじまって以来、長者番付は常に時代を反映してきた。高度成長期には松下電器の松下幸之助氏らが登場、バブル絶頂期には「株・土地長者」が出現し、1992年では前年17万人であった高額納税者が5万人に減少、バブル崩壊の実態を描き出した。90年代後半はIT企業の新規上場で経営者が多く登場、またその年にヒット曲をとばしたミュージシャンや、好成績で話題になったスポーツ選手、人気が爆発した芸能人が長者番付にエントリーされた。
サラリーマンの高額納税者といえば、2004年度の高額納税者番付で投資顧問業のファンドマネージャーが1位、37億円という納税額から算出された給与報酬は100億円に達し話題になった。
米経済誌フォーブス発表の「他界した有名人の長者番付」というものがある。著作権料や出版物、CDなどの売上高を合わせた売上によるもので、歌手のエルビス・プレスリーが約4,500万ドル(約51億9,000万円!)の収入で5年連続でトップ。2位はスヌーピーで有名な「ピーナッツ」の執筆者チャールズ・シュルツ、3位はビートルズのジョン・レノンと続く。「死して名を残す」だけでなく売上もあげる。これは、もう頭が下がりますね。
移り行く時代を反映してきた長者番付。次の税法改正のタイミングで長者番付は廃止されるかもしれない。毎年、芸能人やスポーツ界の長者番付を定番トピックスとしているテレビ局や出版社としては痛手かもしれない。