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ノーベル賞とは違いますよ
ドクター中松も受賞、イグ・ノーベル賞とは?
2005年10月14日 (text by ゆ)

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先日、ドクター・中松こと中松義郎氏が「イグ・ノーベル賞」受賞したというニュースが発表された。

近年ノーベル賞とともに話題に上ることが増えてきたイグ・ノーベル賞だけど、どんな賞なのだろうか?そこで、G-Searchが提供する新聞・雑誌記事横断検索を利用して調べてみた。

まず笑わせ、そして考えさせる

イグ・ノーベル賞が創設されたのは1991年。
設立したのはアメリカのユーモア・科学雑誌「風変わりな研究の年報」とその編集者マーク・エイブラハムズ氏。賞の名前は、「ノーベル賞」と「不名誉な・くだらない・卑しい」を意味する「イグノーブル(ignoble)」をかけて付けられたもので、「人々を笑わせ、考えさせる独創的な研究」に対して贈られるものだ。

受賞者が発表され、授賞式が行われるのは毎年10月。本家ノーベル賞の発表に合わせて発表される。本家ノーベル賞とは異なり故人であっても対象とし、世界各地の審査委員(ノーベル賞受賞者も含まれる!)が厳正な審査を行い決定される。

なお、このイグ・ノーベル賞、運営費のほとんどは授賞式への入場料で賄われているという。授賞式が行われるのはエイブラハムズ氏の出身校であるハーバード大学のサンダース講堂。入場券は1枚20ドルで1千枚売りだされるが、あっという間に完売するという人気ぶりだ。

日本でイグ・ノーベル賞の名前が知られ始めたのは2002年。
おもちゃメーカー「タカラ」が犬の言葉の翻訳機「バウリンガル」でイグ・ノーベル平和賞を受賞したことがきっかけだ。
授賞理由は「動物と人間の共存のために貢献した」こと。バウリンガルの大ヒットとともに、イグ・ノーベル賞も知られるようになっていく。

イグ・ノーベル常連国、日本

ところでこのイグ・ノーベル賞、日本が常連国なのをご存知だろうか。設立された1991年の第1回こそ受賞者はいなかったものの、1992年には一組目が、その後ほぼ毎年受賞者が出ている。エイブラハムズ氏が「奇抜なものを尊重し、醸成する気質がある」と絶賛するという日本の受賞内容を紹介しよう。

日本人歴代イグ・ノーベル賞

  • 1992年<医学賞>「足のにおいの原因となる化学物質の特定」という研究
  • 1995年<心理学賞>鳩を訓練してピカソとモネの絵を区別させることに成功したこと
  • 1996年<生物学的多様性賞>岩手県の岩石からミニ人種やミニ恐竜など「ミニ種」の化石を”発見”したこと
  • 1997年<生物学賞>「人がガムをかんでいるときに、ガムの味によって脳波はどう変わるか」という研究
  • 1997年<経済学賞>「たまごっち」を開発し、人々の労働時間を、バーチャルペットの飼育に振り向けたこと
  • 1999年<化学賞>夫のパンツに吹きかけるだけで浮気を発見できるスプレーを開発した功績
  • 2002年<平和賞>犬語翻訳機「バウリンガル」の開発によって、人と犬に平和と調和をもたらした業績
  • 2003年<化学賞>「ハトに嫌われた銅像の科学的考察」という研究
  • 2004年<平和賞>カラオケを発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供したこと
  • 2005年<栄養学賞>三十五年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調、寿命に与える影響を分析したこと

日本人の受賞内容からだけでもわかるとおり「何の役に立つんだろう?」「そういう解釈もありか!」と思わされるものに対して贈られていることが明らかだ。地味な研究や日常の商品・情報を、ユニークな角度で捉えたユーモアにあふれた賞という性格がわかってくる。

ユーモアにくるんだ「皮肉」

しかし、イグ・ノーベル賞は別の側面ももっている。幸い、日本人の受賞内容からはあまり見えてこないが、ユーモアにくるんだ「皮肉」である。

たとえばバウリンガルやカラオケが受賞している平和賞。1996年にフランス大統領が、1998年にインド・パキスタンの両首相が受賞している。これは、広島・長崎に原爆が投下されてから50周年にあたる96年にフランスが太平洋上で核実験を行ったこと、98年にインド・パキスタン両国が競うように2度の核実験を行ったことを皮肉ったものだ。

バウリンガルやカラオケなどといった娯楽性の高い日常に密着したものと、各国から非難を浴びた核実験とが同列で賞を受賞する。こういったアンバランスさもイグ・ノーベル賞の魅力といえるだろう。
本家ノーベル賞のどこか日常から遠い”とっつきにくさ”ともいえる印象と180度異なるこの魅力で、今後も毀誉褒貶、話題を集めていくだろうと思わせる。

なお、平和賞といえば、もうひとつ、2000年の受賞例をご紹介したい。受賞者がイギリス”海軍”となると皮肉かと思いきや、受賞理由は次のようなものだ。 「砲術学校の訓練で実弾を使うことをやめ、代わりに「バーン!」と叫ぶことにしたことに対して」。これにより3年間で500万ポンドの節約になることと、平和と静けさへの貢献が評価されたのだという。一見ばかばかしくも思えるアイデアを真剣に実施する姿勢もさることながら、これを見出して賞を贈るのはイグ・ノーベル賞ならでは、といえるだろう。

副賞は……

最後に、イグ・ノーベル賞の(筆者だけかもしれないが)気になる副賞について。
イグ・ノーベル賞では記念トロフィーと賞状のみ。その記念トロフィーも、たとえば”歯がカタカタと鳴る歯型”や”石版にアクリルの箱を貼り付けただけ”、”アルミ皿のメダルと空気が入っているだけの箱”など。授賞式への旅費すら自腹だという。

本家ノーベル賞では受賞者へメダルと賞状、賞金(一部門あたり1千万クローナ)が贈られることを考えると、その差は歴然、ではあるが、この手作り感あふれる”チープさ”もイグ・ノーベル賞らしさに見えてなかなか素敵な気がしてくる。

関連情報サイト
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2005.10.07 東京夕刊 10頁 社会 写図有 (全224字)
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