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すさまじいクドカン効果
落語ブームに火がついた。ドラマ「タイガー&ドラゴン」効果を追う
2005年6月24日 (text by や)
クドカン

今、落語がブームである。

この落語ブームの起爆剤となったのが、今春から放送されているテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」だ。

このドラマは落語家の家庭とそこに入門したヤクザを描いたドラマ。落語をメインテーマとした設定は、毎回のストーリーが古典落語になぞらえて進められる他、長瀬智也が演じるヤクザ上がりの新米落語家が、その顛末を現代風にアレンジした落語で披露するなど実に凝ったものだ。

脚本を手がけたのが若者から絶大な支持を受ける宮藤官九郎。さらに、主演にジャニーズの長瀬智也、岡田准一を起用したうえで、放送枠も金曜ドラマ枠と実に豪華だ。また落語家の師匠役に西田敏行、その弟子役として春風亭昇太がアドバイザーを兼ねて出演するなど脇も堅い。

これだけのスタッフを擁し本気で落語ドラマに取り掛かったのだ、人気があるのも頷ける。実際、番組の視聴率は「初回視聴率16.2%」と好成績を収めている。

ドラマ人気を代表とする落語ブームだが、現場の寄席ではどんな変化があったのか?
新聞・雑誌記事横断検索」を用いて調べてみた。

タイガー&ドラゴンによる落語人気への影響

検索キーワードを「落語ブーム AND タイガー&ドラゴン」とすると、最近の落語ブームとタイガー&ドラゴンの関連について書かれた記事が多数ヒットする。そこから見られた落語ブームを感じさせる記事を抜き出してみた。

・新宿3丁目の新宿末広亭

「最近、若いお客さんが増えました。お客さんの質に勢いを感じます」

ドラマ放送の翌日には寄席に訪れる若者が増え、週末は2階席を開放する。また、真打を目指す若手が登場しマニアな客が多かった「深夜寄席」でも、ドラマが放送された今年1月以降から客足が伸び、こちらも満席に近い盛況ぶりという。

・春風亭昇太

「落語をまったく知らないお客さんが増えている、敷居が低くなった感じはする」

タイガー&ドラゴンにどん吉役として出演し、さらに落語指導をする春風亭昇太は、ドラマによる寄席への集客効果を認め、ドラマが落語ファンの底辺拡大に一役買っているとみる。

・笑点

「落語にスポットライトが当たってきているという実感がある」

来年初めに2千回を迎える長寿番組「笑点」では、3年前は15%強だった視聴率が今年に入ってぐんぐん伸び、毎週20%を突破。他局であるからか「タイガー&ドラゴン」への言及はなかったが、追い風は感じているようだ。

・落語ワンダーランド

「若い世代に予想以上の反応があり驚いてます」

1月に出した「落語ワンダーランド」は、当初の見込みを上回る売れ行きで、異例のスピードで増刷した。

・演芸情報誌「東京かわら版」

「若者の『落語が好きだ』って言うのは恥ずかしい、という感覚が変わってきた」

05年2月だけで定期購読者が100人増加。

「六人の会」による落語ブームの下地作り

ドラマ開始後からの急激な人気により、一部では、落語ブームが「タイガー&ドラゴン」による一時的なものでは?という危惧がある。だが、落語ブームはドラマだけに頼ったものではない。

落語ブームを支える代表的なものが、03年に春風亭小朝、笑福亭鶴瓶、林家こぶ平(現正蔵)、春風亭昇太、立川志の輔、柳家花緑により結成された「六人の会」だろう。

落語の興行は、都内4ヶ所にある寄席の定席で落語協会と落語芸術協会が10日交代で行っていた。ところが真打ち昇進制度のあり方などへの反対から三遊亭円楽(円楽一門)と立川談志(落語立川流)が落語協会を離脱、定席に出演できない彼らはそれぞれで興行を行う事となってしまったのだ。

「六人の会」は、こうした所属協会や東西の壁を超えて結成され、落語界を盛り立てる企画を次々と立てており存在意義は大きい。

その活動は、03年にスタートした「東西落語研鑽会」による東西・所属組織を超えた落語家の競演を実現させた事から、04年に銀座6会場で行い1万5千人を動員した「大銀座落語祭」。今年3月に約14万5千人を集めパレードを成功させた「林家正蔵襲名イベント」など多数ある。

このように、継続的に落語ファン以外へのアピールする事で、じわじわと落語ブームを浸透させる活動があったのだ。

高座に上がる落語家の責任

一方、新聞記事にはこうした落語ブームに対し冷静な視点もある。

例えば「タイガー&ドラゴン」に触発されて寄席に来たとしても、ドラマに登場するようなイケメン落語家は当然おらず、それにがっかりして帰るケースもあるらしい。

落語は本来は面白い芸能だが、演じる人間によって面白さが極端にかわる事がままあるものだ。花緑などは「落語を見てつまらないと思ったらそれはその落語家がつまらないのであって、落語がつまらないのではない」と言う。

現在の落語ブームにより、テレビや雑誌を見て初めて寄席に足を運んだという人も少なくないだろう。この状況で今後の落語に大切な事は、お客さんをがっかりさせないよう高い質の落語を提供してゆく事だ。

各方面からの後押しのある現在の落語ブームだが、このブームを一過性のものとせず、初めて落語を見たお客さんを満足させる為にも、今、高座に上がる落語家の責任は重いと言える。

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