トップ > G-Search "side B" > 旬の話題
旬の話題
2005年3月18日更新

愛知万博開催目前、変容する万博の開催意義

いよいよ愛知万博の開催が目前に迫っている。日本での万博開催は70年の大阪万博以降、沖縄海洋博(75年)、つくば科学万博(85年)、大阪花博(90年)と4回開催されており今回が5度目の開催だ。

万博といえば、博覧会独特の雰囲気を持つ各館のテーマに沿った特徴的な建造物が印象に残る。特に85年に開かれた「つくば科学万博」では、国内企業の出展館が奇抜な建築デザインを次々と打ち出し、未来都市的と遊園地を重ねた独特の雰囲気を作り出していた。

こうした建造物のなかで一番有名な物が1889年のパリ万博で建てられたエッフェル塔であろう。エッフェル塔はパリの景観との兼ね合いから賛否両論となり、万博終了後に撤去される予定であったが、放送塔としての役割を得て今ではパリを代表とする建造物になったのだ。

また国内では、70年の大阪万博で建てられた太陽の塔が、岡本太郎の傑作として大阪府吹田市の万博公園で今も輝いている。

今回の愛知万博では、会場内にめぐらされた空中回廊の「グローバール・ループ」や、名古屋市パビリオンの「大地の塔」が注目されているが、エッフェル塔や太陽の塔ほどの印象を与えるものではない。

では、エッフェル塔や太陽の塔のほかに、過去の万博ではどんな建築物や出展があったのか?「新聞・雑誌記事横断検索」を用いて調べてみた。

●最新科学技術のお披露目場としての万博

検索キーワードを「万博 AND エッフェル塔 AND 太陽の塔」として検索すると、万博に関連した建造物や出展品に関する記事がヒットした。

それによると、万博ならではの建造物は、最初の万博であるロンドン万博(1851年)に登場した「クリスタルパレス」が走りのようだ。

これは総ガラス張りの長さ564メートルにもおよぶ温室で、産業革命で大量生産が可能になった鉄とガラスがふんだんに使わた。その着想は、現代の植物園に大きな影響を与えたというが、万博終了後、移転先の郊外で火災にあい焼失してしまった。

その他では、67年モントリオール万博の米国館は、球の中にパビリオンや駅をつくり、その後のドーム建設の基礎となった他、1893年のシカゴ万博では大観覧車が登場しアミューズメントのはしりとなるなど、万博を発端として広まった技術が多くある。

こうした大型建造物以外にも、万博で登場し世界に広まった品々は多く、纏めると次のようになる。

・1851年「ロンドン万博」
  水晶宮、蒸気機関車、水洗トイレ、顕微鏡、輪転機、目覚まし時計

  ※産業革命時代のイギリスの国力が表れている

・1873年「ウィーン万博」
  ローラーコースター、金のシャチホコ

  ※日本が初出展

・1876年「フィラデルフィア万博」
  ベル「電話機」、エジソン「電信機」

・1878年「パリ万博」
  エジソン「蓄音機」

・1889年「パリ万博」
  エッフェル塔、エジソン「電灯」

  ※発明品が多く出展され「発明博」の意味合いが強くなる

・1904年「セントルイス万博」
  自動車、飛行機、アイスクリーム、ホットドッグ

  ※ホットドッグが登場し、世界にファーストフードが広まるきっかけに

・1933年「シカゴ万博」
  大観覧車、遊園地、ロボット

  ※アミューズメント施設のはしりに

・1937年「パリ万博」
  ピカソ「ゲルニカ」、プラネタリウム

  ※ゲルニカ出展など戦争の影がみられる

・1939年「ニューヨーク世界博」
  テレビ、ナイロン

・1967年「モントリオール万博」
  ドーム建設、立体映画

  ※球の中にパビリオンや駅を建造。その後のドーム建設の基礎となった

・1970年「大阪万博」
  月の石、太陽の塔

  ※アポロによる月面着陸の翌年で「月の石」に大行列が

●愛知万博は現状復帰へ

このようにその時時の最先端技術・国威を示す場として存在していた万博だが、時代とともにその意義も変化している。

万博には1928年以降、公式テーマが設定されるようになったのだが、その変遷をみると、万博に求められる意義の変化が明確に判る。

例えば、

33年 シカゴ万博 「テーマ:進歩の1世紀」
39年 ニューヨーク「テーマ:明日の世界と建設」
62年 シアトル  「テーマ:宇宙時代の人類」
70年 大阪    「テーマ:人類の進歩と調和」

と、科学技術、開発、発展に焦点を絞ったテーマが続いたが、その後、先進国では公害問題などが顕著となり、

74年 スポーケン(米国)「汚染なき進歩」
84年 ニューオリンズ「川の世界−水は命の源」
85年 つくば科学技術博「人間・居住・環境と科学技術」
90年 大阪花博「自然と人間との共生」
00年 ハノーバー万博「人間・自然・技術」

と、環境に重点を置いたテーマにシフトしてきたのだ。

そうした中で開催される愛知万博は、テーマを「自然の叡智」と環境問題を主題としている。それだけに、開催にあたっては環境への配慮が求められたのだが、当初立てられた計画は、里山の残る瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」約250ヘクタールに会場を建設し、万博終了後の跡地は大規模住宅団地にするという、余りにテーマからかけ離れた内容だった。

この計画に非難が噴出。それを受け土地改変を最小限に抑えた計画による規模の大幅縮小と、跡地の現状復帰を原則とした開発の他、資材のリサイクルなどを考慮した「環境万博」へシフトして行く事となった。

シフト後の内容としては、

「海上の森」会場を15ヘクタールに削減し、観客動員数を1500万人に下方修正したほか、会場作りとしても「非開発型」をとり、公園内に点在する運動場などを施設用用地として使用。その為、会場は6箇所に分散して設営された。

結果、各パビリオンの敷地は離れ、高低差も最大40メートルもある状況になったが、それを解決する為に会場をほぼ1週する空中回廊「グローバル・ループ」を建造。その建材としてはペットボトルなどのリサイクル製品を利用し、コンクリートに比べ環境へのダメ−ジを抑えた。

これらの他にも、

  • 竹素材を温度管理に活用(日本政府館)
  • 会場内で出るゴミを利用して発電
  • 燃料電池車の走行
  • リニアモーターカーによる輸送システム
  • リサイクル建材の利用(グローバル・ループ)
  • 解体で生じるコンクリートの100%再利用
  • 外国パビリオンの建物を再利用

など、環境への配慮を大命題として運営する様が伺え、当初の構想づくりに携わった人の「これだけ計画が変わった巨大イベントは珍しい」というコメントも記事から拾えた。

万博が辿った、大量生産/大量消費型万博から環境万博への転換を、一度のイベントで見せた愛知万博。その転換の成果がどの程度表れているのか、パビリオンなどを見て回る他に注目したい。

(text by や)


※次回更新日は、3月24日(木)の予定です。 バックナンバーを見る トップにもどる
このコラムについて

塔リニューアル





関連記事リンク

愛・地球博:21世紀博の肖像/中 環境に揺れた開催
2005.03.16 東京朝刊 3頁 3面 写図有 (全1743字)

[正月特集]愛・地球博 時代の最先端を一堂に−−万博の歴史、150年の歩み
2004.01.01 中部朝刊 51頁 特集 写図有 (全1607字)

G-Search
株式会社ジー・サーチ