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旬の話題
2005年3月4日更新

1枚描いて200円!?日本のアニメが「空洞化」へ

いまや2兆円規模といわれるアニメ産業(詳しくは前回記事を参照)。その市場は、劇場・テレビ向けアニメ制作と放映だけにとどまらず、近年は、付随するキャラクター商品ビジネスが拡大を続けている。

アニメ関連ビジネスが膨張したきっかけとされるのがポケモンこと「ポケットモンスター」だ。当初ゲームボーイ向けゲームソフトとして登場したポケモンだが、アニメ放送開始と同時に欧米各国でキャラクター商品とゲームの販売が一斉に開始。世界68カ国で放送されたアニメの影響により、ゲームソフトは1億2千万本、カードゲームは130億枚以上を出荷した。

これら関連商品の発売にあたっては、ポケモンを販売する任天堂の出資により著作権管理会社「ポケモン」が立ち上げられ、国内外で約170社とライセンス契約を締結、約2000点の関連商品が制作された。その結果、海外だけで約2兆円のアニメ関連市場を生み出したという。

このようにアニメ関連商品による版権ビジネスが脚光を浴びる中、当のアニメを作る制作会社は様々な問題を抱えている。今回はこれらについて「新聞・雑誌記事横断検索」を用いて調べてみた。

●セル画1枚200円、月収5万円

新聞・雑誌記事横断検索」でアニメ制作会社の現状について調べると、製作現場の苦しい現状を紹介した記事が多くヒットする。

それによると、動画に必要なセル画を作成するアニメーターの収入は、セル画作成枚数に応じた歩合制が主流。その賃金はセル画1枚にあたり200円程度だという。

セル画は1枚を描くのに一日かかる事もあり、慣れた人間でも月300枚〜500枚を描くのが精一杯。すると月収としては、1日12時間近く作業をしたとしても月に約5万円から10万円が限界となる。

今回の記事検索では10年以上前のアニメ制作現場を取り上げた記事もヒットした。それによると当時の賃金はセル画1枚あたり187円。今と殆ど変わりが無い。
むしろ、セル画1枚の賃金でラーメンを食べれた当時の方が、環境が良かったという意見すら見られた。

●低賃金の理由

こうしたアニメ制作現場での労働環境の原因には、アニメ制作の関する赤字体制があるようだ。

通常アニメの制作費は、テレビ局が支払う番組制作費からだされる。この制作費はスポンサーが広告代理店を通じてテレビ局に支払う広告代の一部だ。

番組に支払われる制作費は、30分のアニメとして、一番高額なゴールデンタイムで600万円〜1000万円。深夜枠では200万円〜300万円程度となる。
しかしアニメ制作に掛かる費用は30分あたり800万円〜1300万円と制作費を上回り赤字となるケースも少なくない。

しかも制作費は年々減少しているという見解もあり、この制作環境ではアニメーターの賃金も上がりようがない現状だ。

ちなみに日本のアニメ制作費はなんと欧米の5分の一程度。ここからも日本のアニメ制作環境の不遇さが推し量れる。

こうした厳しい経営状況からコスト削減の為に制作会社が行っているのが、人件費が安い韓国、中国、ベトナムなどへの外注で、現在「絵を描く作業の九割は海外」と言われるまでになっている。

これらで外注に出されるのがアニメーターが経験を積む場であった動画作成だ。それを海外に外注することで、国内での仕事と人材育成面での「空洞化」という新たな問題までもが発生している。

では何故日本ではここまで制作費用が少ないのだろうか?
新聞記事の中から興味ある記事を見つけた。

それによると、漫画の神様とも言われる手塚治虫氏が、日本初の週間テレビアニメとして「鉄腕アトム」を売り込んだ際、その実現の為に制作費を遥かに下回る売値を定めたという。それが前例となり、日本のアニメ制作費が低くなったという「伝説」が紹介されており興味深い。

●版権ビジネスへの壁

こうした厳しいアニメ業界の中、唯一売上げを期待されるのが、上で紹介した版権ビジネスだ。ポケモンなどの関連商品販売の大成功は別格としても、大手制作会社である東映アニメーションが「制作費の赤字を埋めているのが版権事業」と言い切るなど、今や版権ビジネスは制作費の不足を補うものとして欠かせない存在だ。

しかし、これら版権ビジネスがアニメ制作現場を潤しているかと言うとそうではない。

中小の制作会社では、資金の少なさや立場の弱さによる不利な契約により版権ビジネスに参入しずらい状況にある、その結果、版権はテレビ局や大手企業が保有し、中小の制作会社では版権ビジネスの恩恵を受けられないのが現状だ。

この事態に対し、アニメ産業への支援を開始した経済産業省や東京都では、版権に関する不平等な契約が無いか確認すると共に、雛形となる契約書を提示するなど解決に意欲を見せている。またテレビ局に頼らず広く制作費を募る方法として映画などで見られる証券発行などの外部資金導入も提案されている。

このように行政と協力しながらアニメ産業の発展を目指す姿勢は望ましく、東京都などの今後の活動は非常に注目される。

その一方で、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏は、「モノを作るという事は体制に反発しながら努力することで伸びる」とした上で、行政の支援を「古典芸能になれというのかな」と表現。
日本のアニメ業界を盛り上げるただ一つの方法として「いい作品を作ること、それ以外にはない」と記事内で語る言葉の強さが印象に残った。

この言葉からは、アルバイト以下の労働環境にも関わらずアニメを作り続ける人々の心意気が感じられ、この気持ちに応えられる環境が古典芸能を保護すう様にでなく、ごく自然に生まれる事が、日本がアニメ大国とあり続ける為の条件ではないかと思えた。


(text by や)


※次回更新日は、3月10日(木)の予定です。 バックナンバーを見る トップにもどる
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東京朝刊 5頁 社説 (全1188字)

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2002.07.06 東京朝刊 11頁 経済 (全411字)

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