
日本人の人体寸法の測定が「人間生活工学研究センター」により行われている。これは経済産業省の「人間特性基盤整備事業(size-JPN04-06)」の一環によるもので、2006年度末までに、1万人分の人体寸法を測定する計画だ。
調査で集積したデータは、衣服や住宅・家電製品などの日本人体形を踏まえたデザインに役立てる事が可能で、JIS規格見直しの基礎資料にもなる。
その為、この調査対象個所はかなり細かく設定されており、身長や手足の長さなど一般的な箇所から、内眼角幅(左右の内眼角点の間の直線距離)や足囲(足指の付け根の関節全部を含む足の周長)といった細部にいたるまでが対象となる。
また、調査箇所数は1人当たり250ヵ所以上と多く、これをメジャーなどを用いた人手による測量と、レーザー光線を使った3次元測定器により1人当り約2時間かけて行うのだ。
実は、こうした体形調査は約40年前から行われており、最近では92年〜94年の間に全国3万4千人を対象として調査が行われた。
ところが近年になり、衣料品や家電メーカーなどから「男女とも身長が伸びた」「若い女性は特に背が高く、スリムになった」など「寸法と実態が合わなくなってきた」という声が大きくなり、再調査に至ったのだ。
※前回の調査で収集されたデータは、現在「Japanese body size data」として(株)ジー・サーチが提供するデータベースから調べる事ができる。
日本人は大きくなったのか?
では日本人は、この10年間で何処まで大きくなったのだろうか?
新聞記事によると、オンワード樫山では「若い人の体形は女性は丸みを帯び、男性は逆三角形になっている傾向があり、シーズンごとにサイズを微調整している」と、確かに大柄化を伝えている他、今回紹介している人体寸法データとは別に、独自のデータを収集しているワコールが10年前と現在の20代女性を比較したところ、やせ型が増え、胴体は細めだがバストは大きい人が増えた、という。
また本田技研工業では、日本人の平均身長の伸びにあわせ運転席の調整スライドの長さを変更したところ、92年型から3センチ長くなったという。
この調整スライドの長さは、73年型では日本向けと欧米向けでは10センチもの差があったというが現在では同じ長さだ。
このように、我々日本人の体形は年々確かに変化しているようだ。
人体寸法データの使われ方
膨大な手間と時間をかけ作られたこの人体寸法データだが、どのような使われ方をしているのだろうか?新聞記事データベースから、これらに関する記事を調べてみた。
新聞記事によると、この調査事業にはワコールやグンゼの他、トヨタ自動車、松下電工などが協力企業として名を連ねており、衣服の製品開発メーカや自動車、家電の業界が主な利用者と判る。
また最近では高齢化対策のニーズを受け、介護用具や健康器具などの開発における利用も多いという。
具体的な活用事例として以下を見つける事ができた。
★アパレルでの活用事例
「オンワード樫山」では、婦人服「ナイスページ」による高齢者市場の開拓にあたり、シルバー世代の体形を考慮する為、人体寸法データに基づく新パターンや姿勢毎のデータを採用し、サイズのバリエーションを広げた。
また「靴下メーカーの岡本」では、前回の人体寸法データ調査に基づき日本人女性のサイズ分布を分析。様々な体型に合わせ5サイズに細分化したパンティストッキングを販売し、発売翌年には十六億円の売り上げを記録するなど、人体寸法データをビジネスに活用した成功例も見つける事ができた。
これらはいずれも前回の調査結果を受けた取り組みだが、上で紹介したとおり、今回の調査にあたっても日本人の体型が変化している事が既に認められている。その為、今回のデータ再整備によっても、アパレル業界は大きなビジネスチャンスを得られると思われる。
★他の業界
人体寸法データは衣服業界以外でも利用が見込まれている。
「JR西日本」では身長の伸びに注目。新規の車両では、つり革の高さを高いものに変えている。また「TOTO」では37センチが主流だった西洋便器の高さを、若者の足が長くなった事と、ひざを曲げにくいお年寄りが増えた事から、45センチに変更するなど、日本人の体格変化による身の回りの器具への影響が伺える。
また、最近は、高齢化社会やユニバーサルデザインといった意識の高まりから高齢者向け商品に関するデータの需要がたかまっており、例えば、介護支援浴室システムの設計では、安全の為、適切な縁の高さや浴槽の長さを求める必要があるが、ここに人間生活工学研究センターのデータが使われるケースがある。
こうした高齢者向けの商品開発にあたり、人体寸法データのニーズは益々強まると考えられ、こうした調査が10年に一度といわず、毎年でも行われる事も期待されている。