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こんなところにもブームの波が
旭山動物園が魅せる動物の行動展示とは?
2004年10月28日 (text by や)

日本一の動物園といえば「上野動物園」を思い浮かべるが、北海道の旭川にある日本最北端の動物園「旭山動物園」でこれを打ち破る快挙がなされた。

なんと今年の7月、8月の来園者数が約18万人、32万人弱と2ヶ月続いて上野動物園を抜き日本一となったのだ。さらに9月20日は年度通算100万人を突破し、旭山動物園で初の快挙を成し遂げた。

旭山動物園は67年に開園した市営の動物園。園内にはパンダやコアラといった珍獣がいるわけでもないのだが、急騰した人気の原因は何か?「新聞・雑誌記事横断検索」を使い調べてみた。

アイデア園長の小菅正夫さん

キーワードを「旭山動物園」として新聞記事検索を実行すると、2000件以上の記事がヒットする(2005年10月現在)。それによると現在園長として就任する小菅正夫さんによる「行動展示」という動物の見せ方が人気の源らしい。

では行動展示とは何か?キーワード「旭山動物園 AND 行動展示」で検索を再試行すると35件の記事がヒットした。

これらの記事によると、

従来の動物の姿形を見せる展示スタイルは「形態展示」と呼ばれる。それに対し、動物本来の行動や能力を見せる展示スタイルが「行動展示」と呼ばれ、旭山動物園で行うスタイルだ。またこれに加え、旭山動物園での展示方法は動物をできるだけ自然の姿で見せようとする「生態展示」の要素も持つという。

こうした展示方法の成功が入場者数の急増につながったのだが、実際の展示について新聞記事の中から調べてみた。

(1)ととりの村

旭山動物園による行動展示のはしりとなったのが、1997年に登場したこの巨大なバードケージだ。従来は鳥が飛び去らないよう羽の一部を切っていたものを、ととりの村ではそれをせず、人間がかごの中に入る事で、鳥が自然の姿で飛び交う生態を観察できる。

(2)ペンギン館

手が届きそうな距離にいるペンギンの他、ペンギンが泳ぐ水槽の中に水中トンネルが設営され、水中を飛ぶように泳ぐペンギンが見られる。

(3)あざらし館

壁一面の透明アクリル板越しに水中を泳ぐ姿が見られる他、見物客が囲む筒状のトンネルをあざらしが行き交う姿を360度から見られる。さらに好奇心旺盛なあざらしは人が手を振ると鼻を寄せたりし、園内で一番人気となった。

(4)ほっきょくぐま館

半球状の透明ドームが敷地内に設けられており、のし歩くホッキョクグマを目の前で見られる。またプールの壁に窓をつけ、泳ぐ様子やプールへのダイビングなど迫力ある行動が観察できる。

(5)もうじゅう館

日中は寝てばかりいるトラやライオンの檻は、真下に空洞の見学スペースを用意して網目から動物の息遣い等を観察できる。また、夜行性動物の行動を見てもらおうと、お盆の期間は閉園時間を午後9時まで延長した。

(6)オラウータン

オラウータンは本来地上30メートル程度の樹上で生活をする。そうしたオラウータンの本能を引き出す為に高さ17メートルの位置に「空中運動場」を設置。綱渡りをしてエサを取りに行く姿が見られる。

旭山動物園ではこれら行動展示を実践する為に、動物が退屈しないよう飼育環境の工夫・改善に力を入れたという。動物が自分の居場所を見つけられる環境を作れば、自然とそれぞれの特徴的な行動を見せてくれるからだ。

旭山動物園ではこの工夫を動物舎全部に渡って実施しており、新施設には設計から職員が携わっているというから驚かされる。

さらに、その時々の動物達の見所をしらせる手書きのパネルをこまめに用意する他、職員によるお客さんへの動物の説明など、動物本来の姿を知ってもらおうとする姿勢が伝わってくる。お客さんの声もこれらに好意的で、一見派手に見える行動展示の裏に潜む動物園の情熱が来園者急増へと繋がったのだろう。

地域への経済効果

9月にはとうとう年間100万人の大台に達した旭山動物園。その経済効果について小野崎保(旭川大学教授)氏は、市全体への経済効果は80億円を下らないという。

実際、視察した竹中平蔵氏が「地方再生の好例」と紹介した他、長野県の田中康夫知事が絶賛するなど自治体主導のビジネス成功例として全国の自治体から視察が相次いでおり、福岡市の動物園でも行動展示の取り入れによる動物園の再生計画を立てるなど、具体的な取組みに繋がっている。

この流れの一方、旭山動物園を模倣した取組みばかりが全国で進むと、その手法に目新しさが無くなり、結局どこも同じような動物園となってしまう恐れもある。

それを避ける為にも今後の各自治体の取組みには、旭山動物園の模倣に終わらず、情熱やアイデアを実現に移す行動力を見習い、全国で多様な動物園が見られる事を期待したい。

関連情報サイト
関連記事情報(for G-Searchデータベース)
2004.10.18 地方版/北海道 25頁 写図有 (全573字) ※本文50円
2004.10.04 地方版/東京 23頁 写図有 (全1349字) ※本文50円
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